東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎氏が2023年8月15日午前7時16分に急性心不全のため逝去されました。享年82歳。
マンハイム市立歌劇場、ハンブルク州立歌劇場などのヨーロッパの歌劇場の指揮者を歴任し、1970年からバイロイト音楽祭の音楽助手として数々の歴史的公演に携わってきた飯守氏は、1997年9月に当団常任指揮者に就任。以降2012年3月に至るまでの約15年間に渡り、氏がヨーロッパの歌劇場で積み上げてきた経験に基づく音楽的アプローチを当団の音楽に求め続けました。
調性が持つ独自の意味や色合いに好奇心を持って演奏をすること、いわゆる「裏拍」がドイツ語の語感に基づく大変重要な音であること、楽譜に記譜しきれない音楽の「重心(schwerpunkt)」があることを特に重視してオーケストラの演奏に求め、ドイツ音楽を中心とした古典派からロマン派までのレパートリーを中心に展開することで、当団の発展と飛躍に大きく寄与されました。
飯守氏と当団が歩んできた中でも特に「ベートーヴェン全交響曲ツィクルス」(2000年のベーレンライター新校訂版に基づく全曲演奏および2010年のマルケヴィチ版に基づく全曲演奏)、「オーケストラル・オペラ」と題したワーグナーの楽劇の演奏会形式の上演シリーズ(2000~2008年、計7作品)、「ブルックナー交響曲ツィクルス」(2002~2004年および2012~2017年の2回実施、いずれも氏による選集としてのツィクルス)の3つが、日本のクラシック音楽界における「飯守泰次郎×東京シティ・フィル」という個性を確立する決定的な経験となりました。
とりわけ2000年から4年がかりで展開した「オーケストラル・オペラⅠ~Ⅳ ワーグナー『ニーベルングの指環』全4作ツィクルス」公演では、氏の功績が讃えられ2003年度(第54回)芸術選奨文部科学大臣賞を受賞されました。
2012年4月に当団桂冠名誉指揮者に就任後も当団との関係性は変わらず、コロナ禍の最中に傘寿を迎える形となった飯守氏の傘寿記念演奏会として開催した2021年5月のワーグナー「ニーベルングの指環」ハイライト特別演奏会では、イベントの開催制限や海外アーティストの入国制限などの多くの困難を乗り越えて、シュテファン・グールド氏をはじめとする世界最高峰のワーグナー歌手陣を招き、多くの聴衆の皆様と共に氏の傘寿をお祝いできたことが記憶に新しく、そして今年の4月のブルックナーの特別演奏会2公演を皮切りに新たなブルックナー交響曲ツィクルスを展開しようとしていた中で、このようなお知らせをしなければならないことは悲しみに堪えません。
ここに生前の飯守氏の東京シティ・フィルおよびクラシック音楽界への多大なる貢献に対し心からの感謝と共に、深い哀悼の意を表します。
なお、飯守泰次郎氏の出演を予定しておりました10月4日(水)実施の第364回定期演奏会につきましては、実施内容についてただ今検討を致しております。改めてホームページ等にてご案内差し上げます。
一般社団法人東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
2023.08.16 お知らせ